2024-08-04

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ボルヘス『伝奇集』と安部公房「題未定(霊媒の話より)」を少しずつ読む。ボルヘスはやたら固有名詞が多く難解というイメージがあり今まで敬遠していたのだけど、読み始めてみると案外素直に入り込んでいける。固有名詞の羅列は話をもっともらしくさせて虚実を曖昧にするための装飾的要素であり、知識がなくても話の筋を追うのに支障はない。「ドン・キホーテ」と寸分違わぬテクストを自らの力で(ただ書き写すのではなくドン・キホーテの著者に「なって」)生成するために生涯を費やした男の物語である「ドン・キホーテの著者、ピエール・メナール」などあまりに滑稽で笑いなしには読めない。「題未定(霊媒の話より)」は哀しくも恐ろしい鬱BL。プロットも文体もよく知られる安部公房のものとは全然違って面食らったが、後の作品に通底するテーマも見て取れる。